Covid-19のパンデミックが続く中、アメリカでも日本でも社会のあり様は否応なく大きな変化を遂げつつあります。その中でもアメリカで暮らす日本人、日系人コミュニティの方々が知っておかなければならない大きな問題の一つに国籍と移民法があります。アメリカの市民権を自らの意思で取得された方々は日本国籍がなくなっている中、日本国籍を持たない方々の入国を日本は現在厳しく制限しています。日本国籍のままアメリカで生活なさっている方々は、外国人が歓迎されない社会になりつつある中でその影響を大きく受ける移民法に従って暮らさなければなりません。知りたい情報はネットを調べればすぐ答えが得られるものの、その真偽のほどが定かではないものがあり、またネットに載った頃には真実であったものの、その後の政府側のルール変更で今は当てはまらなくなっていることもしばしばあるかと思います。そこで今回は日本の入国管理、アメリカの移民法それぞれの 専門家をお呼びし、いま何が起きていて正しい情報は何か、についてお二人に語っていただきました。
現在の日本の入国管理に関する専門家としては、法務省入省後、ニューヨーク総領事館にて査証・国籍・戸籍担当領事や、東京入国管理局成田空港支局で主席審査官をお勤めになり、現在はニュージャージーでShiozaki LLCを立ち上げて日本の国籍ビザコンサルタントをなさっていらっしゃる塩崎恵子さんに講師をお勤めいただきました。ご講演の中で塩崎さんが強調なさっていたことの一つに、自己志望によるアメリカ国籍取得者 (日本国籍は喪失しています) が、「これまでも大丈夫だったから今度もいける」と思って手元にある日本のパスポート (パスポートに記載の有効期限内でも、実は失効しています) で日本に入国を試みることは絶対にしてはならない、ということでした。新型コロナ禍においては、一度日本を出国してアメリカのパスポートで再入国ということもできず、入国管理局で違反者として取り調べを受けざるを得ない状況とのことです。一方で、アメリカからの訪問者の入国を拒否している日本でも、元日本人に対しては「上陸拒否の例外として認められている特段の事情」が適用されるとのことで、アメリカを出発する前に取るべき手続きのお話がありました。
アメリカの移民法については、Green and SpiegelでPartnerを務めていらっしゃる弁護士のEmily M. Cohenさんにお話しいただきました。コーエンさんはフィラデルフィア日本人会のヘルプライン(法律相談)もご担当いただいています。コーエンさんは1. アメリカ入国の手続きについて、非移民ビザ、永住権保持者、アメリカ市民それぞれについて2. 永住権取得の方法3. アメリカ国籍取得の条件と方法4. 非移民ビザをめぐる状況5. 今後の移民法の方向性といった非常に幅広い内容につき、日本国籍者が従わざるを得ないアメリカの移民法の現状をお話しいただきました。
パンデミック以降に開催されたこれまで3回のフィラデルフィア日本人会主催セミナーと同様に、今回のセミナーもアメリカで暮らす日本人・日系人コミュニティに奉仕するという目標の下、非会員にも無料で公開されました。また感染予防のため今回もオンラインで開催されましたが、当会会員のみならず、フィラデルフィア日本語補習授業校、日米協会、 フィラデルフィア日本人キリスト教会、プリンストン日本人会の方々やそのご紹介の方々の出席を得ました。さらにはペンシルバニア州、ニュージャージー州以外の遠隔地からのご参加もあり、総勢70名の参加者でした。
参加者からいただいたアンケートを拝見しますと、「インターネットで探せない情報を得ることができた」や「知ってはいたが専門家に確認できた」など、セミナーコミティの狙った方向性が伝わった手ごたえを感じています。一方で「当てはまらない例が多い」や「質問の時間をもっと欲しい」など、テーマ設定や進行について考えさせられるフィードバックもいただいております。オンラインセミナー参加者というバイアスはあるものの、オンライン開催については肯定的なご意見が多く寄せられました。一方で対面での人と人の交流できる場もオンラインと並行して設けておくべき、というご意見も見られました。今回のセミナーでは、休憩時間中に会長メッセージに加え、スポンサーによるコマーシャルも開始してみました。これは外部のプロフェッショナルな方々による講演も今後増える可能性に備え、スポンサーシップによるセミナー開催の足腰の強化を狙った初めての試みでしたが、ご参加の方々にはおおむね受け入れられていたようです。今後のセミナーで取り上げるトピックについても様々なご提案をいただいております。 それらを踏まえ、これからも皆様のニーズにお応えするセミナーを企画していきたいと思います。
フィラデルフィア日本人会セミナーコミッティー


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