本年度2度目のセミナーが、フィラデルフィア日本人会(JAGP)とプリンストン日本人会(PJA)の共催、およびPrimary FinancialとMadoka Nishimura Realtorの協賛で5月16日午後7時30分より2時間にわたりオンラインで開催されました。今回は市川俊治氏に日本からご参加いただき、”日米年金とWEP”についてご講演いただきました。夕食時とはいえ今回も会員、非会員合わせて132名のお申込みがあり、当日82名と多くの方々が参加されました。市川氏は当会会報の“ここが知りたい!年金―国際よろず相談”の執筆者としてもおなじみであり、38年間民間企業でご勤務後、外務省改革の一環として始まった領事シニアボランテイア制度の第1期生としてNY総領事館、さらにサンフランシスコ総領事館で各3年合計6年間勤務なさいました。その官と民の経験・知識を基に”海外年金相談センター”を設立なさり日本国外に在住する邦人のために”年金-国籍-老後の日本帰国”に関するご相談やご支援などでご活躍中です。
現在アメリカではワクチンのお陰でやっとこの長いパンデミックのトンネルから抜け出せそうですが、その間に私たちは多くのことを学びました。事実、会議や商談など遠隔地に出張したり、出かけたりすることではじめて成り立つものと思われていたものが、リモートで事足りることを知りました。セミナーにおいても交通機関を利用することなく、開催場所も心配することもなく、自宅で多くの方々が受講することができることを身をもって知りました。特に今回この年金に関するテーマは、日米のクロスボーダーで生活している現役世代からシニアの方々に至るまで重要な問題であり、当会およびPJA共にセミナーの企画を進めていました。そこで両組織の会員である大塚氏のご尽力により両会の共催、そして市川氏には日本からご参加いただく形でオンナラインセミナーを開催することが出来ました。セミナー開始前には当会の船木会長、PJAの黒田会長より両日本人会共催の祝福、関係者への感謝とともに、今後両組織の関係をさらに深めていく旨のご挨拶がありました。
前半では日米の年金に関し1)日本で数年働いたが年金は受給できるか2)国籍変更・グリーンカード放棄は日米の年金受給に影響はあるのか3)協定による日米の年金通算とは4)日米の遺族年金の受給資格と年金額は5)将来の年金請求への備えは6)年金への課税はどうなるのか7)働きながら年金を受給すると年金は減額されるのか8)海外からでも国民年金に加入した方がよいのか9)離婚しても夫の年金はもらえるかなどお申込者の方々から事前にいただいていた質問への回答も含めて話されました。
休憩時間中の協賛スポンサーによる動画配信のあと、後半は棚ぼた排除規定(WEP:Windfall Elimination Provision の略)日本での年金受給を米国でのソーシャルセキュリティの申し込みの際に報告すると、本来もらえるはずのソーシャルセキュリティが減額されてしまうことについてでした。1)日本の年金受給者は何故米国年金が減額されるのか2)減額の対象となる年金は3)減額金額の算出プロセス4)WEPを避ける対策はに関し、聴衆の皆様との質疑応答を含めて詳しくお話していただきました。そして日本からの公的年金からWEPを外すための嘆願書提出キャンペーン活動への協力の依頼を含め、皆様の理解と協力が大切ということも強調されました。またセミナー中も聴衆の皆様からご質問が多くあり、全ての質問に答える時間がなかったものの、未回答となってしまったご質問、およびセミナー後にいただいたご質問は、市川氏より書面で回答いただいております。更に疑問、質問をお持ちの方は市川さんの”海外年金相談センター”にメール、電話でご連絡いただけましたらと思います。
当会とPJAではこの年金セミナーの第二段を今年の10-11月頃に企画しております。第二段は市川氏とガーツマ氏(PJA副会長)による「国籍の選択・老後の日本帰国と日米の税制」(仮)と題し、市川氏が「国籍の選択と老後の日本帰国」、米国CPAでいらっしゃるガーツマ氏が「米国の年金、IRA, 401Kの日米の税申告、グリンカード放棄後の申告、帰国前にすべきこと、放棄のタイミング」についてお話しいただく予定です。詳細は日にちが近づきましたらご連絡いたしますので、皆様どうぞご参加ください。今回のセミナーにはこれまでで最も多くの方々にご参加いただき、盛会のうちに終了することができました。2時間で日米年金とWEPの全てを理解することは大変ですが、いろいろな情報を気軽に手に入れることのできる現在、あやふやな情報も多くあり、正しい情報や知識をもとに現実と向き合い、年金制度を含めた社会保障を理解していくことがとても大切だと思います。 今回および次回のセミナーを皆様の老後の生活設計のための有益な材料にしていただけるものと期待しています。
セミナー後のアンケートを通して多くの方々から参加への感謝の言葉ととともにご寄付もいただいております。これらのアンケートの結果などを踏まえてこれからのセミナーを企画し、皆様のニーズにお応えするとともに、PJAを含めて他の組織の方々との交流を強化していきたいと思います。今後とも皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
